そんな時、担当してくれた先生やスタッフの優しい言葉と温かい笑顔を見て心が安らぎました。その笑顔はその場しのぎの「作り笑い」ではなく、患者さんやその家族の立場を理解してくれているからこそ、生まれてくる笑顔でした。笑顔が伝わり、心が安らぎ、これから頑張ろうと思えるようになりました。
生活習慣病といわれる病気は、ほとんどの場合症状がありません。また、いざ病院を受診しても風邪のように治るという事はほとんどなく、定期的な受診や検査が必要になる慢性の病気です。そのため検査結果が良ければいいのですが、結果が悪いのではないかと不安になったり、それを医師に怒られれば落ち込んだりもします。
私は常々、自分の親を想うように、本当に患者さんのことを心配している立場にたった診療をしてきました。するとある時、診察を終えた所で患者さんから「病気のことはともかく、先生の自然で温かい笑顔を見て、なんだか自分の気持ちが明るくなり安心できた」と言われました。
「相手の立場に立つこと、相手を思いやること、そこから生まれる笑顔」が、いかに大切かということを教えてもらいました。私の心の中で大切にしているエピソードです。
私は恐縮して「どうしてお亡くなりになったのに、感謝していると言えるのですか」と聞いてしまいました。すると本人が家族だけに話したことがあり「こんどの先生は自分が話し終わるまでちゃんと話を聞いてくれる。看護師さんより多く来てくれて優しい言葉をかけてくれる。診察も丁寧にしてくれる。」 「尿意を急にもよおしたが誰もいなくて困っていたとき、先生が尿瓶をあててくれた。先生には申し訳なかったが、とても助かった。家族からもお礼を言って欲しいと頼まれていた」とのことでした。私は自分にできることをしただけだったのですが、医師として大切にすべきことは何なのかを、教えてもらった気がしました。この患者さん・ご家族との出会いにより、私は大切なことを教えて頂き、成長していけたのだと思っています。10年以上経った今でも忘れることはありません。
それからというもの、私はもし患者さんが自分の親だったら、兄弟だったら、子供だったら、ということを考えて診療にあたるようにしています。そうすれば自然と気持ちの入った診療になりますし、ダメなものはダメといった毅然とした対応もできます。相手の立場にたった、本当にその人のためになる診療をしたいと思っています。
忙しい病院の医師にとって、患者さんは数多くいますが、患者さんにとってお医者さんは一人です。患者さんは「治りたい・これ以上悪くなりたくない・自分がどういうことになるのか知りたい」という気持ちで病院に行くはずですし、「いい先生に当たりたい」といった良縁を求めているものです。私はそういう気持ちに丁寧にこたえること、出会いを大切にすることが医師としての成長に繋がると考えています。「患者さんと出会った今を大切にする」それが私のモットーです。
医師が患者さんに病気のことをわかりやすく説明したつもりになっているだけ、一通り説明しただけでそれっきり、それは分かりやすい説明でも思いやりのある説明でもないと思いました。患者さんは専門用語だらけの説明ではなくて、本当に分かりやすい説明を聞いて納得できれば今の病気の状況が分かりますので、少しでも安心できるでのはないでしょうか?。 分かりやすい説明をするには、医師がその病気のことを深く知っているのは当然のことで、深く分かっていなければ分かりやすい説明などできるはずがありません。また、説明が一方通行であってもいけません。分かりやすく説明したつもりになっている自己満足はいけないと思います。
私は「患者さんが何を伝えたくて、何を知りたいのかを感じること」、「患者さんにどのように伝えることが思いやりのある、分かりやすい説明になるのか」を、常に意識して診療にあたっています。
・日本内科学会 総合内科専門医 ・日本糖尿病学会 糖尿病専門医 ・日本内分泌学会 内分泌代謝専門医 ・日本医師会認定産業医
専門医資格は、認定研修施設で規定以上の研修を積み、研修責任医師(教授)の推薦を得たうえで、書類審査・筆記試験・面接試験のすべてに合格しないと、取得することができません。また、取得後も規定以上の研修を修了しなければ、専門医を更新することができないなど、最新の医療・専門性を高めていく努力が求められています。私は「専門医として、深く確かな治療を提供していきたい」と考えています。